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キュウリ美味しいね。

ネタバレ・クライシス

あなたはネタバレというものを気にするタイプだろうか?
映画、ドラマ、小説、漫画、アニメ……あらゆる創作物を嗜む者にとって このネタバレ問題は切っても切り離せない。
 
私もそういった創作物を好む人間の一人だが、どちらかと言うとネタバレには厳しい方だと思う。自分がネタバレされるのも嫌だし、他人に作品の感想などを伝える際にはかなり気を遣っているつもりだ。そして、SNSで軽率にネタバレをしている他人にも少なからず憤りを覚える。
 
しかし、ネタバレとはどこまでを言うのだろうか。ネタバレにも時効はあるのではないか。
そう考えるきっかけとなったのは、M-1グランプリ2018敗者復活戦での さらば青春の光のネタである。
 
ネタの冒頭で、森田さんが かの有名な『太陽にほえろ!松田優作演じるジーパン刑事の殉職シーン「なんじゃこりゃ〜」のモノマネを披露すると、東ブクロさんが「え、ジーパン刑事死ぬん!?俺 『太陽にほえろ!』見たことなくて今最初から見てるのに!!最悪や、ネタバレされた!!」と騒ぎ立てる。(このネタ含め、Amazon primeで過去のM1をほぼ全て視聴できるので是非見てください)
 
漫才の内容について真剣に考えるのも変な話だが、確かに、主人公の死なんて数あるネタバレの中でも最大級のそれである。しかしジーパン刑事の殉職シーンは今や誰もがーー『太陽にほえろ!を見たことのない人でもーー知っているような結末であり、今更ネタバレだと文句を言う人などいない。解説するほどのことでもないが、だからこそ さらば青春の光 の二人もネタとして使っているのだ。
他にも、『タッチ』の上杉和也の死。私はタッチの原作なりアニメなりを全く見たことはないが「綺麗な顔してるだろ。死んでるんだぜ」の台詞は知っている。
フランダースの犬』の主人公ネロの死だってそうだ。マトモに見たことのない人でも「パトラッシュ、もう疲れたよ」と言い残し天使に抱えられ天に召されるシーンは知っているはずだ。その映像が流れると毎回柴田理恵さんが号泣することも。
 
しかし今の作品はこうはいかない。
例えば最近 私が個人的に受けてしまったネタバレは『鬼滅の刃の主要キャラクターの死である。Twitterで #死んでしまって悲しかったキャラ なるタグをよせば良いのについ踏んでしまってあっさり被爆した。
私はAmazon primeでこの作品のアニメだけは観ていたのだが、アニメ放送分では原作漫画の7巻分(現在は20巻まで発売されている?)にしかならないため、それ以降の内容は全く知らない。Twitterで死ぬと知ったキャラは 特別好きとか思い入れのあるキャラクターではないものの「あ、このキャラ後々死ぬんだ……」と言いようのない気持ちになった。
 
作品の内容的にも 主要キャラクターが死ぬということはうっすらとでも分かっていたはずなのに こんないかにもなタグを検索するなど自殺行為なわけだから、今回は私の自衛不足・自業自得だと思っているし、その投稿をした人を責める気もないが(そもそも大して好きでもない作品だからというのが大きいと思うけど)、しかし私が逆の立場だったら 多分いや絶対やらない。
 
私がネタバレに関して少々厳しいのは、恐らくミステリというジャンルをずっと好んできたからかもしれない。
ミステリ(ここでは探偵ものと仮定する)では、犯人、トリック、動機……と分かりやすい「先に知ってしまうと面白くない」要素が多い。
それらを最初から分かった上でも楽しめる作品も勿論あるが、私はミステリの醍醐味は「自分で推理すること」と「騙される快感」だと思っており、他人にもそれを味わってほしいため、好きな作品は極力ネタバレを避けて紹介している。
 
もっとも、私が好む推理小説や探偵ドラマはSNSでネタバレを踏む・踏まないの問題になることはまあまずない。
理由は色々あるだろうが、一番大きいのは「ファン層が熱心なSNSユーザーと(恐らく)あまり被っていない」という点だろう。
なんだかんだでSNS特にTwitterで声が大きいのは若いオタク(ここでは漫画やアニメ作品の、と定義する)だと思っている。
勿論SNS推理小説や探偵ドラマについて語る人もいるにはいるが、漫画・アニメ好きの人口の比ではないし、ネタバレがうっかり目に入ってしまうほどではないと思う。
 
その点、先の『鬼滅の刃のような現在進行形の若年オタク向け人気コンテンツはなんせファン人口が多いので、ネタバレについての意識が人それぞれ違い、中には気軽に重大なネタバレをする人もいる。
また「キッズ」と言うと蔑称のようだが、実際ファンの年齢層は低めの作品(少年漫画は大体そうだと思うけど)であるため、ネタバレは避けるべきという一種の暗黙のマナーを そもそも知らないファンが多数派を占めている可能性も高い。
 
そう考えると、もし『タッチ』SNSが発達した今現在連載していたら 雑誌の発売日にトレンドに「和也」「綺麗な顔」のようなワードが入り、何事かとうっかり見てしまい「……えっ、和也死ぬん!?」となる可能性もある。
※先ほども書いた通り、『タッチ』の内容は全く知りません。
 
また主要キャラの死といえば(どんな繋ぎだよ)、2010年 私が当時結構ハマったミステリ系(実際そこまでミステリ・推理系ではなかったが、一応そういう売り込みだった)作品で『ダンガンロンパ』というゲームがある。
アニメ化もされ、当時はかなり流行ったので名前くらいは知っている方も多いのではないだろうか。
先に断っておくが、ここから結構なオタク話になるので注意してほしい。
 
この『ダンガンロンパ』(以下『ロンパ』)というゲームの内容についてざっくり説明すると、とある学園に高校生たち数名が監禁され、誰かを殺さないと出られないという状況におかれる。なんやかんやで殺人事件が起こると、主人公=プレーヤーは現場検証や他の生徒への聞き込みを行う。その後しばらくすると学級裁判というものが開かれ、そこで犯行現場の状況や自身のアリバイなどについて他の生徒たちが証言するので、主人公=プレーヤーはその証言の中で自分が見つけた証拠や証言と矛盾するポイントを指摘(論破)し最終的に殺人犯を見つけ出す。そして犯人が罪を認めるとオシオキという名の死刑に処されてしまうのだ。
 
上の説明でお分かりかと思うが、この作品のキツいところは 被害者と犯人どちらもクラスメートで、それなりに愛着を持ったキャラクターであるということだ。当然物語が進めば進むほどそれは強くなる。
私は純粋にミステリ好きとして、推理ゲームというのがやってみたくてこのゲームに興味を持ったのだが、好きなキャラが死んでしまうーーそれも不慮の事故や名誉の戦死ではなく 仲間を殺したり殺されたりしてーーということにかなりのショックを受けた。
 
元々ゲームにほとんど興味のない私にしては珍しく『ロンパ』は誰に勧められたわけでもなく、自分から発売されてすぐに購入してプレイし、熱中し、pixivで二次創作を漁った。
正直、今初めて触れたとして同じようにハマれるかは分からないし、下ネタなど無理な描写もあったが、とにかく当時はハマっていた。
その頃はまだアニメ化もされていなかったので、投稿されている作品数も今と比べれば数えるほどしかなかったように思う。
 
そんなpixivにおける『ロンパ』の投稿作品でほぼ必ずあるのが ネタバレの有無についての注意書きである。
イラストや漫画の前に「○章までのネタバレを含みます」「○章犯人のネタバレ有」などとワンクッション置いて 未プレイの人がうっかり見てしまわないような配慮をしている人が多数を占めていた。
別にこれ自体は今でも他の作品でも 普通に見られる光景ではあるが、『ロンパ』に関して言えば 初期から追っている身としては 時の流れとファン層の拡大に伴い明らかにネタバレに対する意識が変わってきているように思う。
 
『ロンパ』シリーズは、その後ゲーム第2シリーズの発売、そしてアニメ化、スピンオフ、新シリーズ……と一気に人気と知名度が拡大し、初代発売から10年経った今やオタクの半数は通ったんじゃないかと思えるくらいの有名作品にまで成り上がった。
それ自体はもちろん喜ばしいのだが、同時に明らかなネタバレも増えたように思う。
 
例えば、作中でキャラクターが殺されているシーンの画像や、明らかにそれと分かるような描き方をされた黒幕のイラストをSNSでよく目にする。
恐らく、『ロンパ』をプレイした・視聴したことのない人の中にも「あー、このキャラ『ロンパ』の黒幕だよね」などという認識のある人もいることだろう。
 
個人的には これからプレイする人もいるかもしれないんだから、せめて被害者・犯人・黒幕くらいの最重要事項は伏せてほしいと思うのだが、これも『太陽にほえろ!』や『タッチ』と同じなのだろうか。もう時効なのだろうか。
 
……いや、でもやっぱり こと『ロンパ』に関しては一応推理モノという性質上、こういうことは知らずにプレイした方が楽しめるのは確かである。
ダンガンロンパ』に興味を持っている人、持った人は自粛生活の今 是非プレイしてほしいが、その際は絶対にクリア前にキャラ名などで検索はしないでほしい。絶対にその方が楽しめるから!
 
最後に、『太陽にほえろ!』『タッチ』『フランダースの犬そして さらば青春の光 のネタに関して、これから観るつもりだったのに私のこの文章でネタバレしてしまっていたら大変申し訳ありませんでした。
 
ダンガンロンパ1・2 Reload - PSVita

ダンガンロンパ1・2 Reload - PSVita

  • 発売日: 2013/10/10
  • メディア: Video Game