ОГУРЕЦ

キュウリ美味しいね。

夢か現か金縛り

突然だが、皆さんは金縛りの経験はあるだろうか。

私は最近でこそ無くなったものの、幼い頃からつい数年前までは何度も金縛りに苦しめられていたのだが、周りに金縛り経験者があまりおらず理解してもらえなかったので、今回はここで私の金縛り体験について書いていこうと思う。

そもそも金縛りとは、簡単に言うと 体は眠っているのに脳は起きていて、意識はあるのに体が全く動かなくなる状態のことである。

心霊現象のように言われることもあるが、これは科学的にきちんと説明できる現象であって幽霊とかそういったオカルトとは無関係である。というか、私は幽霊が大の苦手なので心霊現象であっては困る。

では具体的にどんな風に金縛りになるのかというと、私の場合は まず夢と現の境界線上、もう少し分かりやすく言うと、うとうとして「あっ、もう寝る」という状態になったときに、同時に「このまま寝る方に傾いてしまうと金縛りにあうぞ」と分かるのだ。何故分かるのかと言われても、分かるものは分かるのだとしか言いようがない。

とにかくこの夢現境界での睡魔との戦いがなかなか苦しい。

睡魔軍が数万の武装兵で容赦なく攻めてくるのに対して覚醒軍は僅か数百の竹槍歩兵で頑張っている。授業中に寝まいと耐えているときと同じ感覚と言えば分かりやすいだろうか。

しかし金縛りの場合は授業中に居眠りしてしまうといったお気楽な問題ではない。少しでも気を抜けば全身が動かなくなってしまう危機なのだ。

ちなみにこの戦いの間は、何故かざわざわとした音が聞こえることが多い。無論夢、つまり幻聴で、雷のゴロゴロいうような音のときもあれば人の話し声、笑い声もある。

夢を見ているのだから、この時点で眠っているのではないか、という指摘はごもっともだが、それも少し違う。強いて言うなら「半分寝ている状態」だが、こればっかりは同じ経験をした人にしか分からない感覚だろう。

私にとってこの幻聴は少し、いやかなり怖いものだが、「これは科学現象これは科学現象これは……」と負けじと脳内で必死に唱えている。

そんな格闘も虚しく睡魔の手に引きずられてしまうと、再び苦しい戦いが続く。

指先までピクリとも動かなくなり、助けを呼ぼうと声を出そうにもせいぜい小さく唸ることしかできない。

全身に数十キロの重しを乗せられ、何故かお尻から何かが入ってくるような感覚がする。念のため補足しておくが、あくまでもこの「感覚」は「多分そんな感じがする」くらいのもので、実際にお尻に何かが入ってくる感覚は経験がないので、同じかどうかは分からない。

そして再び頭の中でうるさく鳴る雑音。

声にならない声をあげながら ぎこちなく動く。さながら地中から這い出るゾンビのようだろう。

もし他人が金縛り状態の私を見たら なかなか恐ろしい光景に違いない。幸か不幸か、今のところ金縛りになるのは必ず一人で寝ているときなのだが。

しかし私も大人になり 金縛り歴10年を越えるベテランとなってからは、寝る前のうとうとし始めたときも「金縛れるもんなら縛ってみぃや!」の精神で構えている。

このときもまた、傍目から見れば相当恐ろしい姿をしているだろう。半分寝ているので白目を向いていたりするかもしれない。

例の戦いでなんとか覚醒軍が勝利をおさめ、一瞬でも目が覚めたと感じたら その瞬間を逃さず立ち上がり、歩き回り、キッチンへ行って水を飲むなどして30分~1時間ほど起きておく。完全に目が覚める前にまた寝てしまうと、再びこの戦いに身を投じることになってしまうのだ。金縛りベテランとはいえ、覚醒軍の勝利はあくまでも運が良かっただけ、二度はないのだ。

そうこうしているうちに、いつの間にか金縛りにあうことはなくなっていった。

喉元過ぎればなんとやらというか、いざ金縛りがなくなると「たまには経験してみたいな〜」などと調子に乗る気持ちがないわけではない。いや、そんなことを言って本当に久々に金縛りがきてしまったら以前のように太刀打ちできるとは思えないので、この言葉は撤回しよう。

そんなわけで以上が私の金縛り体験談だが、あくまでも私個人の場合なので、他の金縛り経験者の方と同じかは分からない。自分の場合はこんな感じだというのがあれば ぜひお聞きしたい。

今夜も何事もなく眠りにつけるよう祈りつつ。おやすみなさい。