ОГУРЕЦ

キュウリ美味しいね。

名は体を表すとは言うが

 8月1日、M-1グランプリ2022が開幕した。少し前からお笑いについて書くことが増えているのでお気づきかと思うが、ここ数年で私は結構なお笑いファンになっている。
 元々子供の頃から「エンタの神様」や「爆笑レッドカーペット」などのネタ番組や、「はねるのトびら」などのコント番組は毎週楽しみに観てお気に入りの芸人もいたし、M-1をはじめとする賞レースも一応毎年見ていたので お笑い自体は好きだったのだが、ここ数年は賞レース(特にM-1)に挑戦する芸人たちを、スポーツの大会を楽しむようにある種の緊張感を持って見ている。
 ひょんなことからハマったコンビの片方が熱狂的M-1オタクで、それに影響されたというのも理由の一つだが、元々スポ根系漫画などもこう見えて(?)好きなので、私のように「特定のスポーツそのものが好きというわけではないが、スポーツ観戦やスポ根漫画は楽しめる」というような人間はハマりやすいジャンルじゃないかと思う。

 ちなみに数年前から私が一番応援しているのはカベポスターというコンビで、去年・一昨年とM-1の準決勝まで進出しており、お笑いファンの間では既に実力派として有名だが、世間一般的にはまだそこまで知られていないと思う。そんなカベポスターだが、今年は関西の若手向け賞レース2つで優勝しており、今まさに「キている」コンビである。今年こそM-1決勝進出!と多くのファンは思っているが、私は同時にこれ以上人気が出てしまうのを寂しく思う気持ちもある。そんな超無名時代からの古参ファンでもないくせに図々しい……とも我ながら思うのだが、私はそういう人間である。

 お笑い賞レースはスポーツと親和性が高いという話だが、当然ながら努力が実り成功する者ばかりでなく、いつまで経っても日が当たらない者もいるという点も同じである。
 今年の3月、ジソンシンというコンビが解散した。恐らくジソンシンを知っている人は結構なお笑い好きだと思うのだが、私が彼らを初めて知ったのは妹と『探偵ナイトスクープ』の番組観覧に行ったときのことで、そこで前説をしていたのがジソンシンだった。正直、その後も私は彼らのネタはほぼ見ることはなく、特に応援していたわけでもないのだが、コンビ名だけは覚えていたため、解散したと知った時はなんとなく切ない気持ちになった。
 今や売れっ子となった芸人が、売れてない時代の話をする中で「前のコンビを解散して~」などと言っているのはよく聞くが、あまり売れていない若手芸人の解散を知ると、その「前のコンビ」がこれなんだろうか……などと考えたりしてしまう。しかしそもそも解散後売れる人も一握りだろう。解散後それぞれ別の相方とコンビを組んで、現在どちらも売れているアインシュタイン河井さんとアキナ山名さんみたいなのは相当レアなパターンだと思う。

 さて、随分前置きが長くなってしまったが、そんな元ジソンシンの酒井さんが数か月前に別の芸人と「若葉のころ」というコンビを新たに結成したらしい。正直なところ「ふぅん」としか思わなかったのだが、酒井さんが新コンビ結成を報告するツイートに、興味深い反応を示していた人がいた。
 こう書くと有名人か何かがコメントしていたのかと思われるかもしれないが、そういうわけではなく、ただの一般人らしき全然知らない人のツイートなのだが、「『若葉のころ』って、Kinki kids主演のドラマタイトルですよね。あのドラマのファンなのでやめてください。繊細で切ない物語なのに、芸人の名前に使われるのは雰囲気壊されて嫌です」(要約)というものがあった。

 『若葉のころ』というドラマは知らなかったのだが、同様に作品タイトルを付けている有名な例だと『さらば青春の光』などがあるが、これに関してはもはや芸人の方が有名かもしれない。(偉そうに書いているが、私も映画の方の『さらば青春の光』は全く観たことはない。)
 余談も余談だが、昔友人4人でUSJのハロウィンイベントに行った際、友人の一人が映画好きで、映画『さらば青春の光』の主人公をイメージした格好をして来ていたのだが、クルーさんに「(踊る大捜査線の)青島刑事ですよね!」と言われていた。確かに言われなきゃ私もそっちだと思いそうだ。

 話をコンビ名に戻すが、芸人のコンビ名は他の芸能人の芸名やグループ名と比べて固有名詞を使っているものが多く、芸人という仕事上その名前でふざけたこと・馬鹿馬鹿しいことをするため、他にも「失礼だからやめてくれ」と言われそうなものも多そうだ。
 私がなんだかんだ未だに応援しているスーパーマラドーナは 旧コンビ名がマラドーナだが、サッカーファンの中には不快に思う人もいるかもしれないし(正直武智さんの度重なるやらかしを思うと、仮にいても文句は言えない気もする)、先に挙げたアインシュタインだって相対性理論アインシュタインを馬鹿にしていると言う人もいるかもしれない。もっとも人名の場合はそもそも別のマラドーナさん、別のアインシュタインさんだって居るだろうから、作品名とはまたちょっと事情が違うかもしれないが。

 例の「好きなドラマのタイトルだからやめてほしい」というツイートを見た最初の印象は「こわっ!何もそんな風に言わんでも!」という感じだったのだが、よくよく考えたら自分が好きなもの・思い入れのあるものの名前を簡単に(というのも一方的な判断でしかないのだけれど)芸名に使ってほしくない・茶化されたくないという気持ちは分からんでもない。
 少し違うが、神話の登場人物なんかを検索すると、真っ先にアニメやゲームだかのキャラクターが出てくるのもなんかモヤる。別にそういう擬人化・美少女化・イケメン化的作品が悪いわけではないし、私も(内容にもよるが)好きなのだが、普通に検索したときには出てこないでほしい。

 芸人という仕事自体をコンテンツとして楽しむようになってから、コンビ名の由来も調べたりするのだが、そのコンビ名で売れる・売れないというだけでなく、こういう問題も出てくるよなと改めて感じている。せめてその由来となった作品なり人物なりのイメージに泥を塗らないような活躍をしてほしいなと思いつつ、さらばのブクロさんは恐らくかなり泥を塗っているが、なんだかんだで世間から愛されているので凄いなと感じている。