ОГУРЕЦ

キュウリ美味しいね。

お笑い素人によるお笑い語り

和牛というお笑いコンビがいる。お笑い界最大の賞レースであるM-1グランプリの決勝に複数回出場し、その度に視聴者たちからも優勝大本命と予想されるほどの実力派コンビである。私の周りにも彼らのファンは多く、私自身「実力もあり勢いもあるコンビ」だと思っている。思っているのだが、どうしても何かが好きになれない。

先に言っておくが、私は別にお笑いに詳しいわけでは全くない。有名な賞レースや「エンタの神様」をはじめとする有名番組は積極的に見てきたし、売れている芸人くらいは一通り知っているものの、テレビに出ていないような若手芸人を知っているわけでも、たくさんの芸人のネタを見ているわけでも、特定の芸人の大ファンで劇場に通ったりしているわけでもない。その程度の「ちょっとお笑いが好きな素人」の個人的な意見として読んでほしい。

話を和牛に戻すが、別に彼らのネタが面白くないと言っているのではない。むしろM-1 2017でのウエディングプランナーのネタはとても面白かったし、伏線回収の鮮やかさや 別の役に移るにあたり殆ど違和感を感じさせないのも見事だと感じた(偉そうなことを言ってるがほぼほぼ審査員コメントの受け売りである)。
しかし、同じくM-1 2017での彼らのもう一つのネタ(旅館)は、ウエディングプランナーほど素直に笑えなかった。内容としてはボケの水田さんが客を演じ、冷淡に旅館や女将に対してネチネチ批判していく。それに対してツッコミの川西さん演じる女将は表面上は終始ニコニコしつつも次第に客に対する不快感を露にしていく……といったものである(上手く説明できた気がしないので、知らない人はぜひ実際に見てほしい)。
ド素人の私の知る限りでは、この「川西さん(が演じる役)の言動を理屈っぽい水田さん(が演じる役)がネチネチ攻める」というのが彼らの基本スタイルのようだ。そしてこれこそが私が彼らをどうも好きになれない部分だと気付いた。

私は元より何にでも感情移入しやすい質だ。それは漫才・コントのような短時間のものでも同じで、例えば東京03がやるような"微妙にありそうなシチュエーション"のコントは、面白いという感情よりも前に「気まずい」「いたたまれない」「見てるこっちが恥ずかしい」という気持ちになることが多い。もっともこれは彼ら3人の演技力が非常に高い故であり、もしそれほどでなければここまで思うことはなかったかもしれない。(なお東京03のネタは大好きだ。)
話が少し逸れたが、和牛の場合も同じで、ネタ中の彼らがとても自然で、簡単に言うと水田さんを(実際の彼の性格などは全く知らないが)本当に性格悪い・怖い・そこまで言わんでもいいだろと感じてしまい、笑えないのだ。

それでもコント漫才(「俺は◯◯役やるからお前××役やってな」という形のもの)ではないものの場合はネチネチ漫才でもまだ耐えられる。「これが彼ら二人の関係性なんだろう」と思えるからだ。
しかし先の旅館ネタでは、"水田さんと川西さん"という二人の芸人としてではなく、"一般的な客と一般的な女将"という記号として見てしまうため、いくらネタと分かっていても「女将可哀想……」という感情が大きくなってしまう。
中でも「料理上手な彼氏に手料理を振る舞う彼女」というネタ(彼氏を喜ばせようと健気な彼女の気持ちなど完全無視で料理のミスを淡々と厳しく指摘する)は特に無理だった。終始「酷すぎる!はよ別れろ!彼女可哀想!!」としか思えなかった。

思い返してみれば私が好きなコンビはみんなボケが基本的に「アホで可愛い」タイプだ。歴代M1王者で言うと、銀シャリパンクブーブーサンドウィッチマンあたりが好きだ(実際可愛い可愛いと言われているのは鰻さんくらいだが、佐藤さんも富澤さんもにこやかなので広い意味で可愛いと私は思う)。

こう見るとやはりアホ可愛い方が万人受けするし評価されるのでは……?と思ったが、例のM-1 2017優勝のとろサーモンの久保田さんはふてぶてしいキャラだったので、何の説得力もなかった。

長々と書いたが最初に言った通り私はお笑いに関してはド素人であり、和牛に対しても散々書いたが決して彼らのアンチではない。ただ、世間での彼らの人気を見るに 私のように感じている人はそんなにいないんだなあと思ったのでこんな風に書いてみた。ぜひ彼らにはネチネチ漫才以外のネタもたくさんやってほしい。