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ОГУРЕЦ

キュウリ美味しいね。

トントンのおじさん

子供の頃、夜更かししていると「お化けが出るから早く寝なさい」と親に言われたことのある人はどれくらいいるだろうか。
スマホタブレットを使いこなすような最近の子供にはそんな手は通用しないらしいが、私たちの年代ならこのセリフは一度くらい聞いたことがあるように思う。
我が家でも私が小学校に上がる頃まではこの「寝ないと○○が来るよ」システムが採用されていた。
ただしお化けなどといった非科学的なものではない。
うちで夜更かししている子供を狙うのは「トントンのおじさん」である。

幼い頃は小さなマンションに住んでおり、夜は両親と私、妹の4人全員同じ部屋で寝ていた。
そして私や妹がさっさと寝ないと、どこからか トン…………トン……トン……トントントントントントントントントン‼という不気味な音が聞こえてくるのだ。
父は小声で緊張したように言う。
「しっ!静かに!トントンのおじさんが来た、子供がおるのがバレたら拐われるで!!」

トントンのおじさんとは、簡単に言うと人拐いのおじさんである。
子供を見つけてはチョコレートなどのお菓子で誘い、捕まった子供は貨物船で外国へ運ばれ、大人しい子供は奴隷にされ、うるさい子供は眼球や内臓を売られる。
もちろん父の作った設定で、トントントン……という音も父がこっそり壁を叩いているだけで、私たち姉妹もそんなことは分かっていたので「しょーもな(笑)」という態度をとっていたが、今思うと妙に現実的でお化けよりよっぽど恐ろしい。

クリスマスの夜も良い子のところにはサンタクロースが来るが、悪い子のところにはトントクロースが来ると言われていた。
サンタクロースが赤い服に白い髭、プレゼントを入れた白い袋を持っているのに対してトントクロースは真っ黒な服に目深にかぶった黒いサンタ帽子、捕まえた子供を入れるためのゴミ袋のような黒い大きな袋を持っているのだ。
これは父が絵に描いてくれた。ちなみに父はなかなか絵が上手く、かなりリアルで怖かったのを覚えている。

しばらくして弟が生まれると今の一軒家に引っ越し、私は自室で妹と寝るようになり、また弟はすぐに寝る良い子だったため トントンのおじさんが我が家にやって来ることはなくなった。

私と妹は「今思うとブラックすぎる。これが保育園児を寝かせるための言葉か(笑)」と時々トントンのおじさんの思い出を語る。
最初に言ったように、今の子供には「お化けが来るよ」が効かないらしいが、それなら今こそトントンのおじさんの出番だ。
お化けはいるかいないか分からないが、トントンのおじさんは現実にいるのだから。